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新たな“地域工務店像”を考える#01 〜地域工務店にしかない「4つの特徴」〜

小林コラム

SEP16, 2020 / Written by 大輔小林

新たな“地域工務店像”を考える#01 〜地域工務店にしかない「4つの特徴」〜

|地域工務店の未来を考えてみる

 

全国の地域工務店の経営支援を手がけていく際、特に経営や事業に関する戦略の相談を受ける場合に、ただ、コンサルタントとして目先の課題に答えを出すだけではなく、少し先の世界に視野を広げて「これからの工務店の価値や役割はどうなっていくのだろうか……」という問題意識を持つようになりました。

その中で、私、小林が自分の経験や知識に基づいて、考えていること、住宅工務店の経営者のみなさんに知っておいていただきたいことを書き綴っていきたいと思います。

 

 

|「2つの戦略オプション」の先にある未来

 

まずは、私が考えていることを共有していただくために、経営戦略を立案するためのフレームワークの1つ、「アンゾフの商品×市場マトリクス」をもとにして整理してみます。

 

多く企業は、「同じ市場で新規商品を打ち出す」or「既存商品で新しい市場に打って出る」のいずれかの戦略をとろうと考えるケースが多いと言えます。

 

「同じ市場で新規商品を打ち出す」という戦略の代表例はリフォーム事業。ただし、リフォーム業界への参入を考えても、1棟あたりの利益や時間当たりの利益を考えると、大きく拡大し続けていくイメージが持てない工務店も少なくはありません。

 

そして、「既存商品で新しい市場に打って出る」という戦略の例は商圏の拡大。既存エリアで成功したのちに別のエリアへと進出するというケースです。しかし、ただ単に「エリアを広げる」という考え方は、ハウスメーカーの戦略と本質的には変わりません。その戦略を突き詰めていった先には、「小さなハウスメーカー」になるという未来しかありません。

 

 

|地域工務店がハウスメーカー化したとき失われるもの

 

もともと地方工務店の価値は、全国一律で同じ商品を展開するハウスメーカーとは異なる魅力を持った選択肢を提示できることだったのではないでしょうか。また、多くの地域工務店も「小さなハウスメーカー」になりたいとは思っていません。

 

しかし、現実的には、「リフォームや中古流通などさまざまな方法を検討したけれど、成功するイメージが持てなかった。結局は他エリアへの拡大しか道が残されていないのではないか」……そんな結論に行き着くケースは少なくありません。価値を失ってでも目指してしまう。なりたくなのに目指してしまう……私は、そこに大きな課題を感じてきました。

 

ここで、長年、大工として仕事をしてきた私の父の話をさせてください。職種は違えど同じ業界で働いていることもあり、年齢とともに親子ふたりで酒を酌み交わしながら仕事について語る機会も増えてきました。そこで、父はいつも「日本のGDP2割くらいが住宅産業だろう。俺たちは日本の経済を支えてきたんだ」と、誇らしそうに語ります。

 

しかし、業界の未来の話になると、「この地域で『家を建てたい』という需要は、もう頭打ちになりつつある。できることと言ったら、他の地域に進出するくらいだよな……」と、少し残念そうな言葉もこぼします。

 

自分たちの仕事に誇りを持っているけど、未来には明るいイメージを持てない……そんな話を聞くと、なんとも歯がゆい。そして、次第にこの状況を変えたいという想いが湧き上がってくるようになりました。

 

 

|地域工務店だから発揮できる「新しい価値」を考える

 

こうした状況を目の当たりにしてきたからこそ、私は、地方工務店ならではの新たな価値を見出す必要があると考えています。もちろん、すぐに新しい事業、新しい市場に参入することは簡単ではありません。

 

戸建住宅は1棟建てると、その利益は平均で約600万円にもなります。これは他の業界と比較しても非常に効率がいい厚利少売のビジネスモデルです。それが当たり前になっている工務店が、単価が低い事業に手を広げるというのも抵抗があるでしょう。

 

それでも、人々のニーズや価値観、社会のルールはどんどん変わっていきますし、それに伴って工務店業界を取り巻く状況も変化していきます。「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫」とは、必ずしも言えないのではないかと思います。

 

本来、地方工務店は多角的な事業展開がしやすい、いくつかの特徴を持っています。それらを上手く活かすことができれば、きっと新しい地方工務店のあり方を提示できるはずです。そんなことを考えながら、今までも全国各地で地方工務店の価値を再定義するような、さまざまなプロジェクトをつくってきました。

 

 

|地域工務店と向き合う中で見つけた「4つの特徴」

 

その中で私は、地方工務店には他の業種にはない「4つの特徴」があることに気がつきました。

 

・地域経済のリーダーシップを担う存在である

・今注目されている「おうち時間」の舞台をつくっている

・人を集め、にぎわいを生む拠点(=建物)を原価で用意できる

・長期的な顧客接点を持っている

 

これらの特徴は、私自身が経営支援を続けてきて、現場で感じ取ったリアルなもの。そしてこの中にこそ、これからの時代に向けて、地方工務店だからできる、地方工務店にしかできない、新しい事業展開へのヒントがあるはずです。

 

「新しい地方工務店像をつくる」と題したこのコラムでは、これから数回に分けて、この「4つの特徴」についてお話を進めていきたいと思います。よろしければ引き続き、お付き合いください。

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