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新たな“地域工務店像”を考える#04 〜長期的な顧客接点を持っている〜

経営コラム

APR14, 2021 / Written by 上村

新たな“地域工務店像”を考える#04 〜長期的な顧客接点を持っている〜

異業界に見る「顧客接点」継続のための努力


今回は少し、住宅業界とは別の視点から話をはじめてをしてみようと思います。

例えば自動車業界。
近年、自動車自体が売れなくなり、カーディーラーの多くは、販売後の点検、車検、保険販売、果てはインターネットやケータイ電話の販売といった、サービスを収益源にするようになってきています。

あるいは、NetflixやHuluといった動画配信サービス。
月額定額制で会員を集めるサブスク(サブスクリプション)で収益を上げるために、各社、差別化を図るべく魅力的なオリジナル作品を制作・配信しています。

この2つの例の共通点は、入口の大きな収益よりも、継続した小さな収益をベースにしていること。そして、そのために、顧客との接点を少しでも長く持ち続けることに心血を注いでいることが上げられます。カーディーラーから豪華なDMや、丁寧なお手紙が届くのも、動画配信サービスが話題作を次々に配信しているのも、全ては「顧客接点」を継続していくための努力だったりするわけです。



「顧客接点」という視点から見た地域工務店の強み


さて、ここで話を住宅業界に戻してみましょう。住宅は自動車以上に大きな金額が動き、同時に、自動車以上に買い換えサイクルが長い(一生に買い物と言われるくらいの)商品です。また、動画配信サービスと違って、入口で大きな利益が得られることも大きな特徴と言えます。つまり、入口で大きく稼げて、さらにお客様と長くお付き合いができる。と言えます。

そもそも、お引き渡し後の35年間もの支払期間と、その先の人生にまで責任を持って関わることが当たり前。100年いも及ぶ長期間、機能の維持が求められる産業は住宅業界以外にはほとんどありません。

これが、私たちが見つけた住宅業界特有の特徴であり、これからの時代の生き残りのカギを握る視点です。点検やアフターメンテナンスなどはもちろんですが、リフォームやカスタマイズ、後付けの太陽光発電など、家は自動車以上に副次的なサービス需要があり、その可能性はまだまだ発展の余地があります。



「前」に伸びていく顧客接点


ただ、ここまでで語ってきた顧客接点は、いわゆる販売「後」の接点だけの話。住宅業界では、「後」のみならず、「前」の顧客接点が伸びはじめていることをご存じでしょうか。

近年、住宅購入を検討するお客様の多くは、家を買う住宅会社を選ぶ以前に、これから土地を買い、長く暮らすであろうまちそのものの価値まで慎重に調べ、考える傾向にあります。つまり、住宅という商品を売るためには、住宅の外側にあるまちの価値をも高め、伝えていかなければならない状況が生まれているんです。こうした視点から見ても「地域工務店はまちの人気を高める役割を担うべき存在になってきている」と、言えます。

実際に、従来のモデルハウスの枠を越えて、商圏に宿泊可能な建物を用意して、数日〜1週間程度、そこで生活し、そこから職場に通ってもらう「仮住まい体験」を提案したり、これまでは全国区の大手ハウスメーカーに相談するしかなかった移住込みの家づくりにも、オンラインツールを駆使して積極的に対応している地域工務店もあります。

カタログやホームページだけでは伝えにくい、そのまちの暮らし心地までを伝え、まちの魅力をより深く発信できる。それもまた、地域工務店だからこそできる、「前」に伸びた顧客接点のつくりかたではないでしょうか。



人気を維持できなかったまちがどうなるか


もちろん、直近でお客様を集め、家を売るために「まちの人気」を高めることも重要ですが、その「人気」を維持することはさらに重要な課題となります。

30年以上前に日本中を席巻したニュータウンブームを思い出してください。短期的な大規模開発と人口流入を目指した結果、1〜2世代で離脱者が急増し、ゴーストタウン化しているまちも少なくありません。この状況をこれまでのコラムでご紹介してきた「まちの上場」という観点で見ていくと、明らかに「まちの人気」の維持に失敗していることがわかります。これは、一般企業で言う中間層の離職とも状況が似ている……と言えば、イメージしやすいかもしれません。

中長期的な視点を持たずにまちを一気に開発すると、時代の変化に対応できず、離脱者が増え、世代の溝が生まれていき、まちは衰退してしまう。そして、衰退したあとも、そこに開発した分譲地やそこに建てた家、そこに住む人たちと責任を持って付き合い続けなければならない。これは今、非常に難しい課題となっています。



ハーレーダビッドソンに学ぶコミュニティづくり


この課題を解決する重要になってくるのは、顧客接点を個々のお客様単位・販売する住宅単位の「点」ではなく、まちの住人の世代やコミュニティをつなぐ「線」で捉える視点です。盤石な優良企業が世代の断絶なくバランスのいい年齢層で構成されているように、まちもまた、世代間が緩やかにつながっていなければなりません。

こうした視点から見た顧客間のつながりづくりで成功しているのが、オートバイメーカーであるハーレーダビッドソンです。長年にわたり独自のオーナーイベントを運営し、既存ユーザーたちの交流を活性化することで「会いたい人がいるコミュニティ」を育て上げ、そのイベントを体験した新規ユーザーをも取り込み続けています。



地域工務店こそ、顧客接点の「点」を「線」で結べる存在


これを住宅業界に置き換えたらどうなるでしょうか?「後」の顧客接点づくりの中で、マルシェをはじめとした魅力的な拠点やイベントを開発し、世代を越えてOB同士の「点」をつなでいく。すると、そこには、魅力的な「線」としてのコミュニティが形成され、「このまちから出たくない」と考える帰属意識の高い住人が増えていく。

それが自ずとまちの魅力となり、「前」の顧客接点づくりでも優位に働いていく……そんな流れが生み出せたら、まちの人気は高まり、その人気は、数十年先の未来まで維持されていくはずです。

何より、地域工務店は、「そのまちから逃げない存在」なんです。これは、大手ハウスメーカーとは明らかに異なる在り方。当たり前すぎて自覚していない地域工務店が多い部分ですが、「そのまちから逃げない存在」だからこその安心感や信頼性があり、まちで生まれる「点」と「点」を線に結ぶことができる。これはもっと自信を持って欲しい個性であり、強みです。

コロナ禍を経て価値観が大きく変わった日本……都心一極集中の価値観が揺らいでいる今、さまざまなまちで求められているのは、大資本による大規模開発ではなく、地域と人に寄り添いながら細やかな試行錯誤を繰り返し、住人とともに柔軟に成長していける小さなまちづくり(スモールデベロップメント)です。そして、その担い手となれるのはみなさん地域工務店しかいない。私たちはそう強く確信し、これからも全力で応援していこうと考えています。



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